Design Stories

ISHIMOTO × 風景
ランドスケープと一体化した外観
内部には連続空間に
多様な場所が散在する

東北大学青葉山コモンズ

Outline

新造のキャンパスに建てられた学生共用施設。学部図書館、ラーニングコモンズ、カフェテリアなどを収める。
学内の主要道路に面した北側が直線的な外観なのに対し、公園緑地に面した南側の壁は、緩やかに曲線を描いて丘陵の風景に、しっくりとなじんでいる。
1階内部は間仕切りがなく一体化しており、ところどころに挿入された光庭により、領域がゆるく分けられている。
空間の連続性を強めているのが天井を覆う木製の格子だが、一方でこれは高さが滑らかに変わることで、空間の多様さを増す効果も生んでいる。
学生たちはこの建物の中を歩き回りながら、自分にとって居心地のよい場所を発見して、利用することができる。

新しいキャンパスの中心施設として

創立100周年を迎えた東北大学では、自然地形や緑と融合した環境調和型の新たなキャンパス「青葉山新キャンパス」の整備を行っている。その中心施設のひとつが青葉山コモンズだ。学生共用の施設で、内部には農学部図書館、ラーニングコモンズ、講義室、カフェテリアなどの機能を収める。この建物の設計に石本建築事務所は実施設計者として関わった。当初は鉄筋コンクリート造で計画されていたものを東日本大震災を経て鉄骨造へと変更、それに伴って基本設計の段階からのやり直しを、あらかじめ定められていた期間内に終えなければならないという、難しいスケジュールのプロジェクトだったという。

立面の印象はキャンパスモール側(左)とユニバーシティパーク側(右)とで大きく異なる

周囲の風景に馴染む曲面壁と素材

農学部校舎など、周囲の建物はマスタープランで定められたデザインコードに沿って建てられているが、青葉山コモンズはキャンパス全体の景観に変化やアクセントを与える役割を持つシンボリックな建築として設定されており、デザインは自由に考えることができた。では何を設計の条件にするのか。それはランドスケープだった。敷地の南には自然環境を残した開放型の公園として位置付けられる「ユニバーシティパーク」が広がっている。その景観と調和させるため建物の高さを抑えるとともに、パーク側の壁面を丘陵地の等高線に合わせてゆるやかにカーブさせた。仕上げには、景色を映し、年月とともに風合いを増していく素材として、チタン亜鉛合金を用いた。「周囲の景観に馴染ませることをまず目指しました」と設計チームを率いた小林一文氏は明かす。

キャンパスモール側は、丘陵地の地形を意識して高さを抑えるとともに緩やかな弧を描く壁面を採った

1階に広がる連続的な空間

一方、敷地の北側はキャンパス東西に貫く主要軸線「キャンパスモール」に面している。道に沿ってまっすぐに延びた壁面でありながらも、内部の活動が外にも現れたファサードだ。1階はピロティ状で、雨の日も濡れずに歩ける。中へ入ると、1階はエントランスホール、ラーニングコモンズ、ラウンジ、カフェテリアなどが仕切りなくつながりながら広がっている。ところどころに挿入された光庭が、領域をゆるく分けると同時に、自然に光や風の流れを取り込んでいる。床も敷地の高低差に応じて、高さが変わる。レベルが切り替わる階段状の場所は、ラーニングコモンズのプレゼンテーションスペースとして生かされた。

1階はエントランスホール、ラーニングコモンズ、カフェテリアなどのエリアが光庭によってゆるやかに分けられている

天井面に地形を転写する

「当初は敷地の傾斜そのままに、スロープで床を連続させることも考えました」と言うのは意匠設計を担当した細野卓也氏。それは実現できなかったが、その代わりとして、滑らかに連続する曲面を、頭上に転写した。耐震性を考慮してスケルトン天井だが、そこにスギ板を格子状につないでいき、天井面全体を覆ったのである。これにより、伸びやかに広がっていく空間の一体性が強調されると同時に、床や天井の高さが様々に異なる多様な場所が実現することになった。同じく意匠設計チームに加わった植田隆也氏は「いろいろな場所をつくり出すことができてよかった。格子天井のすべての交点で座標を出さなければならなかったのでたいへんでしたが」と振り返る。

ひとつながりになった1階の空間には、微妙に高さが変化しながら連続的に広がる格子天井が架かる

安全を見せて伝える構造の設計

2階は大小の講義室と学部図書館の閲覧室が占める。設計で工夫したのは、閲覧室の上部に設けた自習席だ。これをユニバーシティパーク側の外側に張り出させることによって、竪穴区画が必要な3階になることなく、ロフト状の場所を生み出している。こうした複雑な断面の建物を実現させるうえで、構造設計の貢献も大きい。この建物の構造形式は、ブレース付き鉄骨ラーメン構造。柱の柱頭部にはピボット支承を採用することにより、鉛直荷重のみを担うようにして、構造を明解にした。また耐震要素となる二重鋼管座屈拘束ブレースは光庭と合わせて配置している。「あえて見せることで、建物の安全性を使用者へ視覚的に伝えることもできたのでは」。構造設計を担当した吉田幹人氏は、現しになったブレースの意義を説明する。また閲覧室の自習席エリアは屋根構造から吊ることで、下の柱をなくしている。設計の主題だったランドスケープも、これにより遮るものなく味わえるようになっている。

2階の図書館ではロフト状の自習席が設けられパークの景観を楽しみながら自主学習が可能だ

Member

小林 一文 ………設計監理部門 建築グループ 部長
細野 卓也 ………設計監理部門 建築グループ 主事
植田 隆也 ………業務企画部門
吉田 幹人 ………設計監理部門 構造グループ 主任

東北大学青葉山コモンズ

プロジェクトメンバー

意  匠 小林一文/細野卓也/植田隆也
構  造 石川智也/吉田幹人

作品データ

施  工 西松建設
敷地面積 64万6935m2
建築面積 5696m2
延床面積 9955m2
階  数 地上2階
構  造 鉄骨造
工  期 2015年2月〜2016年6月