対馬博物館
- 長崎県対馬市
- 2022年
国境の島に、文化を護り伝える、ここにしかない場をつくる
金石城の石垣の上に建つ大屋根
史跡指定地である宗家の居城、金石城の石垣上に位置する。石垣に沿うように角度をずらしながら3つの大屋根を配置した。屋根の勾配は軒先を石垣に対して極力低く抑えながら内部の収蔵庫部分のボリュームの確保から決定されている。また長く伸びた庇は内部環境を外光から守ると共に、屋根だけがそこにあるような、歴史的な文脈にふさわしい物静かさと確かさをもった姿を目指した。
「現代の御文庫」を中心に据えた護る構成
博物館の使命は、建築の寿命をはるかに凌駕し、人類の軌跡である資料を次世代に受け継いでいくことである。歴史・立地・資料の特性から「護る」ことを本建築の主題とすることは必然的であると考えた。収蔵庫は資料を強固に護るRC造のボリュームとして建物の中心に配置した。このボリュームがロビー中央に「現代の御文庫」としてシンボリックに据えられ、歴史が護り繋がれてきたことを讃え、次の時代に伝えるという覚悟をあらわしている。
マテリアル・ディテールがつくる歴史の重みと対峙する固有の体験
対馬の歴史的遺構や自然・地形に強い個性がある一方で、街並・建築については標準化された豊かさ確保の為にユニバーサルなものとなっていると感じる。対馬に博物館をつくる上でこのユニバーサルさを乗越えた、「ここにしかない」ということが、島内の誇りを醸成し、島外からは訪れる価値のある場をつくる上で重要だと考えた。マテリアル・ディテールを多様に用いながら、素材感や色味、ディテール、さらには什器など、細部にいたるまで注意を払うことで、その根底のトーン&マナーを「対馬らしい」ものへと丁寧に一つの空間に統合していくことがこの建築のもう一つのテーマである。それにより豊かでかつ固有のアイデンティをもった体験をつくりだせればと願っている。
- 所在地
- 長崎県対馬市
- 構造
- RC造/一部S造
- 規模
- 地上3階
- 延床面積
- 5,028m2
- 主な用途
- 博物館
- 竣工
- 2022年03月
- 撮影
- 阿野 太一
- 備考
JV:トータルメディア開発研究所
2023年 日本建築家協会優秀建築選100