ホーユーヘアカラーミュージアム

日本初、ヘアカラーに特化したミュージアムである。業界の歴史文化に関する展示世界への期待感を醸成する建築デザインを目指した。

徳川の地の歴史性とヘアカラーの現代文化の共生
敷地は閑静な住宅街で、徳川園が隣接する歴史薫るまちでもある。まちの歴史性を積極的に取り込み、周辺環境へ配慮するとともに、ヘアカラー文化を後世に伝えるための象徴的なデザインを目指した。建物は周辺住宅と同様に前面道路に対して控えた配置とした。四つ角を落とした角丸形状により圧迫感を低減し、徳川園の土塀にあわせた左官調の外壁仕上によって景観調和も図っている。また、ヘアカラーの仕組みから着想した「何色にも染まる白色」を基調にした有孔折板を外皮に纏わせ、毛髪を想起させるグラフィックにより髪のもつ透明感と柔らかな身体性を表現した。

歴史的景観からヘアカラーの世界へ誘う導入空間
展示世界への導入空間として、内外を通して連続性のあるデザインを目指した。大きなガラス開口を通して見える徳川園の豊かな緑や土塀のある景観に対して、視線を遮らず、ヘアラインを感じさせる地被類を主体としたボーダー状の前庭をデザインした。また、社寺建築でも用いる四半敷きの床仕上を、外構からエントランスホールまで引き込むことで、徳川の和の雰囲気を感じられるアプローチとなっている。内部は、清潔感のあるシンプルな色彩と、丸みを帯びた形状デザインを多用し、身体性を感じさせる細かな配慮によって、展示世界への連続性・期待感の醸成を図った。