田辺市庁舎
- 和歌山県田辺市
- 2024年
―高低差のある敷地をつなぎ、まちをつなぐ「交流拠点」―
高い防災性能とユニバーサルデザインの徹底による強くやさしい庁舎
居場所がつなぐ交流モール:つなぐ庁舎
駅のある北側と商業施設や学校のある南側で9mもの高低差があり、まちの分断が懸念された。そこで、1階から4階までを南北に通り抜ける「交流モール」に沿って多目的ホールや会議スペース、カフェ、キッズコーナー、テラスを配置することで、多様な活動と内外の居場所の連続が南北を自然に結ぶ、まちをつなぐ庁舎を実現した。
高低差を活かした断面構成
既存躯体を山留に活用することで、周辺への影響を最小化して書庫棟を実現した。岩盤の上に建つことから柱頭免振を採用し、生まれた1階の空間を駐車スペースとしている。駐車スペースは、災害時には約2300人を収容する高台一時避難スペースに即転換可能な計画となっている。2階には保健センター、道路につながる3階は市民窓口とすることで、目的に応じて市民がアクセスしやすい構成とした。
見通しの良い梁レス・ワンルームの執務空間
庁舎の中央には各階をつなぐ吹抜け階段を設け、窓口が身近に感じられる構成とした。執務空間は、1スパンを梁レスの設備ルートとしたスケルトン天井とすることで、見通しの良いワンルームの空間を創出。市民スペースとの間を木格子で柔らかく仕切ることで「見る-見られる」の距離感を調整するとともに、ウェイファウンディングにもつながるユニバーサルデザインを徹底した。
紀州材を活用した田辺らしい庁舎
内外に展開する5本1組の木格子は5市町村合併を象徴し、熊野古道の林立する木々を連想させる空間とした。天井ルーバー、造作家具、吊り照明、サインなど随所に紀州材を活用することで、木のぬくもりが感じられる庁舎を実現した 。
自然エネルギーを活かし、安心安全な庁舎計画
中央の吹抜けは、エコボイドとして田辺の心地良い風を庁舎に取り込み、その上部に設けたトップライトからは光を感じることができる。市街地から海まで一望できる美しい眺望の新庁舎は、災害時には市民を見守る災害対応拠点としての機能が見込まれる。
- 所在地
- 和歌山県田辺市
- 構造
- RC造/一部S造/一部PC造1階柱頭免震構造
- 規模
- 地上6階
- 延床面積
- 21,033m2
- 主な用途
- 庁舎
- 竣工
- 2024年04月
- 撮影
- 株式会社川澄・小林研二写真事務所 船来 洋志