木造/木質

  • 2015年ミラノ国際博覧会日本館

  • 社会福祉法人 未来への架け橋 こころ篠路保育園

  • レゾナック(大分県立)武道スポーツセンター

  • 中津川市立福岡小学校

  • 五ヶ瀬町役場

  • 雄武町図書館

CONCEPT

地域の木材を活かし、物語を紡ぐ

昨今、日本の豊かな森林資源の活用(木造化)が注目される背景には、日本の伝統や歴史、文化への敬意、そして自然との共生など、さまざまな物語があります。
木造建築を実現する上でこだわりたいポイントのひとつに「地元木材利用」があります。地域で採取できる木材の種類や大きさ等を入念に調べ、状況に応じて木材調達のシステムも提案する。地域の木材を地域の人で伐採、加工し、地域の職人でつくり上げる、そんな地域循環型の建築づくりが大切だと考えています。

INTERVIEW

設計部門建築グループ 札幌オフィス 堀 真仁
エンジニアリング部門構造グループ 東京オフィス 原 健一郎
エンジニアリング部門構造グループ 名古屋オフィス 植田 圭那子

「想定どおり」は及第点

:建築主の要望に沿った施設を、限られた予算の中で実現可能な図面としてお応えする「想定どおり」は設計者に求められる基本的な能力です。石本建築事務所のサービスとして、そこからいかに付加価値を付与できるかを大事にするべきと信じ、日々努力を続けています。
構造エンジニアは意匠設計者に対し受動的に「建築計画を構造計算し、実現できるようにする」仕事と思われがちですが実はそうではありません。
大分県立武道スポーツセンターでは、プロポーザル時にはメインアリーナを鉄骨造で提案していました。設計者として特定された後に設計スケジュールの見直しがなされ、その機会に共同設計者である構造家の山田憲明さんと「せっかく大分に武道場をつくるなら木造を提案しよう」と企て、木造大空間をつくる技術的なさまざまな課題を克服し、県の担当の方の厳しい要求にもなんとか応えながら実現し、木造大空間の新たな一歩を打ち立てることができました。
東海大学阿蘇くまもと臨空キャンパスでは、正門脇の広場に接する半屋外空間に、県産木材を用いた熊本復興のシンボル空間をつくりたいというリクエストをいただきました。これに対し、学生時代にCLTの研究をしていた同僚の加藤君とともにたくさん悩みながらも、CLTの材料特性を活かしつつパネルのくり抜かれたパーツも活用する「MOTTAINAIハイブリッド梁」の考案に至りました。さらに意匠担当の野間君が、この梁を最大限に活かす空間づくりに取り組み、学内外の方が集う農学部キャンパスらしい空間が完成しました。

東海大学阿蘇くまもと臨空キャンパス(熊本県上益城郡益城町 2023年)
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地元の皆さんと共につくる木造の学校

植田:私は構造設計者ですが、その役割に線を引かず、プロジェクト全体を見据え、社会・顧客に貢献する建築を考えるようにしています。
中津川市立福岡小学校では、この考えを実践することができました。このプロジェクトでは、地域の財産である木材の活用が最も重要なテーマでした。その実現に向けた技術的な提案はもとより、多くの地域材活用や地域循環のため、木材関係者へのヒアリングやコネクティングに奔走し、材料調達のスキーム作成などにも携わりました。建築主や地域の方々と一緒に材料調達にあたり、技術者として細やかな調整を行い、設計に反映していくことで、高い地域材活用率と地元の職人らによる地域循環が実現しました。
子供たちが地域材の柱に触り、抱き着き、笑顔になる姿を見て、子供たちが・地域が・誇れる学校になったのではないかと感じました。建築がもつ役割は,建物の機能に留まらず、地域社会や地球環境に対しても大きな役割を担うものと考え、今後も建築に向き合いたいと思います。

中津川市立福岡小学校(岐阜県中津川市 2023年)

ひとつひとつの建築にあるべき心地よい空間

:林や森の中を歩いていると、バランスを保ちながら枝葉を伸ばした有機的な木々の周囲には、木陰で縁取られた心地よい空間が広がっていることに気づきます。木造建築の設計は、それらの木々を製材して得られた角材や面材を用いて新たな空間を再構築することに他ならず、さらには自然がつくりだす空間に負けない心地よい空間を創出することが設計者の役割の一つだと考えています。
木々の間から光が注ぐ空間の中で子どもたちが気持ちよく走り回る姿をイメージしながら設計したこころ篠路保育園は、園舎の骨格であり遊びの中心でもある遊戯室に特徴を持たせた木造の園舎です。天井高さを上げ、木造現しによって広がりと奥行きを持たせた空間にハイサイドライトを設けることで、光と風が注ぐ園舎になったと思います。
ひとつとして同じ建築が存在しないのであれば、そのひとつひとつに在るべき心地よい空間が何かを、これからも考え続けたいと思います。

こころ篠路保育園(北海道札幌市 2022年)

:自分のアイデアや、時間をかけて検討した結果が、設計打合せでボツになることは日常茶飯事で、その都度残念な気持ちにはなりますが、変わることを恐れずに進んだ先には、プロジェクトの初めに思い描いた夢よりもっと大きな結果が得られるものです。
自分ひとりでは見られなかった夢をプロジェクトチームで一緒に実現することに向け、「設計技術の使いどころ=人柄」をこれからも大事にしていきたいと思います。

DESIGN STORY

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